日本国民は、被用者保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度のいずれかに加入する義務があります。会社員や公務員は被用者保険、自営業やフリーランスは国民健康保険への加入が必要です。
本記事では、健康保険制度の概要を解説しつつ、被用者保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度の特徴を紹介します。各保険の対象者やほかの保険との違いについて解説するのでぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかる内容
健康保険制度とは?|日本の公的医療保険の基本

日本の健康保険制度は、すべての国民が公的な医療保険に加入し、安心して医療を受けられる仕組みです。病気や怪我などの予期せぬ事態に備え、国民の生活と健康を守る重要な制度として位置づけられています。
日本では国民皆保険制度によって、職業や年齢を問わず、すべての人が公的医療保険への加入が義務づけられています。会社員や公務員の人は被用者保険(健康保険・共済制度)に、自営業やフリーランスは国民健康保険への加入が必要です。
以下では、健康保険制度の目的や国民皆保険の特徴について解説します。
健康保険制度の目的
健康保険制度の目的は、病気や怪我などの医療費負担を軽減し、生活の安定を図ることです。
怪我や病気はいつ起こるかわかりません。公的医療保険に加入していれば、保険証の提示で、自己負担額は原則3割で済みます。
こうした制度が整っていることで、誰もが必要なときに安心して医療サービスを受けられます。
日本の医療保険制度の特徴(国民皆保険)
日本では、すべての国民に公的医療保険への加入が義務付けられており、これを「国民皆保険制度」と呼びます。すべての国民が何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられています。会社員・公務員と、自営業・フリーランスでは、加入先が異なるため、以下で確認しておきましょう。
- 会社員:全国健康保険協会(協会けんぽ)または健康保険組合(組合健保)公務員:共済組合
- 自営業者とフリーランス:国民健康保険
なお、75歳以上は全員「後期高齢者医療制度」に加入します。
【全体像】日本の公的医療保険制度の種類

上記でも軽く言及しましたが、日本の公的医療保険制度は以下の3種類に分けられます
【全体像】日本の公的医療保険制度の種類
それぞれの特徴について詳しく解説します。
種類①|被用者保険(会社員・公務員向け)
被用者保険は、企業や公的機関に勤務する会社員・公務員とその扶養家族が対象となる医療保険制度です。被用者保険の中でも4種類に分かれており、職種や雇用先の規模によって加入先が異なります。
種類 | 対象者 |
---|---|
組合管掌健康保険(健保組合) | 主に大企業の社員とその家族が対象。 |
全国健康保険協会(協会けんぽ) | 主に中小企業の社員とその家族が対象。全国健康保険協会が運営し、47都道府県ごとに保険料率が設定されている。 |
共済組合 | 国家公務員、地方公務員、私立学校の教職員などが対象。 |
船員保険 | 船員とその家族が対象。船員の特性に応じた独自の給付制度があります |
被用者保険の大きな特徴は、保険料が雇用主との折半である点です。被保険者が保険料を全額負担する国民健康保険と比べて、経済的な負担が軽減されやすくなります。
また、企業に勤める多くの人にとって、経済的にも安心できる制度と言えます。
種類②|国民健康保険(自営業・無職・フリーランス向け)
国民健康保険は、自営業者やフリーランス、アルバイト、無職など、被用者保険の適用外となる人が加入する公的医療保険です。
所得に応じた保険料の軽減制度が用意されていることが特徴的です。世帯の所得水準によって、7割・5割・2割のいずれかの保険料軽減が適用される場合があります。
会社員を退職して個人事業主になる場合には、通常2週間以内に切り替え手続きをする必要があります。退職後も希望すれば、最大2年間は以前の被用者保険を継続することも可能です。
種類③|後期高齢者医療制度(75歳以上向け)
後期高齢者医療制度は、75歳以上の人を対象とした公的医療保険制度です。基本的に75歳になると自動的に加入することになり、以前加入していた保険からは脱退する形となります。
なお、65歳〜74歳以下でも、後期高齢者医療広域連合から一定の障害状態にあると認められた人も加入できます。
後期高齢者医療制度は、高齢者の増加に伴う医療費を社会全体で安定的に負担するために設けられました。都道府県単位の広域連合が運営を担い、地域の実情に合わせた制度運用が行われています。
後期高齢者医療制度の特徴は、自己負担割合が抑えられている点です。原則1割負担で医療を受けられます。ただし、令和4年10月1日から所得水準に応じて2割または3割の負担となる場合があり、特に2割負担となる方には負担増加を抑える配慮措置が設けられています。
参照:後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について) | 厚生労働省
具体的な自己負担額は、以下の「後期高齢者医療制度とは?|高齢者向け医療保障」の「自己負担割合について」で詳しく解説します。
被用者保険とは?|健康保険・共済組合・船員保険

ここからは被用者保険の概要について解説します。
被用者保険とは?|健康保険・共済組合・船員保険
組合管掌健康保険(健保組合)とは
組合管掌健康保険(健保組合)は、主に大企業や業界団体が独自に設立・運営する医療保険制度です。
厚生労働大臣の認可を受けて設立され、従業員が一定数以上いる企業グループが対象となります。加入対象は当該企業に勤める従業員とその被扶養者です。
健保組合の特徴は、企業ごとに保険料率や給付内容を柔軟に設定できる点です。そのため、協会けんぽよりも保険料を低く設定できるケースもあります。また、福利厚生の一環として充実した付加給付を受けることも可能です。
同じ業種でも勤務先によって受けられるサービスに差があることは理解しておきましょう。
全国健康保険協会(協会けんぽ)とは
全国健康保険協会(協会けんぽ)は、主に中小企業の会社員とその家族が加入する公的医療保険です。厚生労働省所管の全国健康保険協会が一元的に運営しており、47都道府県ごとに保険料率が設定されています。
令和7年度東京都の保険料は月額報酬の9.91%(介護保険第2号被保険者に該当しない者)です。(引用:全国健康保険協会)
協会けんぽの保険料は、介護保険料を含めて企業と従業員で折半して負担します。
組合管掌健康保険(健保組合)は、健保組合のような企業独自の制度はありません。標準的な健診や保健指導が、全国共通の基準で提供されている点が特徴です。
共済組合とは
共済組合は、国家公務員・地方公務員・教職員など、公的機関に勤務する職員とその扶養家族が加入する医療保険制度です。勤務先に応じて、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私学共済など複数の組合に分かれています。
一般的には、共済組合の方が健保組合や協会けんぽよりも保険料負担が低い傾向にあります。特に、国家公務員共済や私学共済は、協会けんぽと比べて保険料率が低いケースが多いです。
ただし、例外もあるため一律とは限らない点に注意しましょう。
船員保険とは
船員保険は、船で働く人とその家族のための特別な医療保険制度です。通常の会社員とは異なる勤務形態や生活環境を踏まえ、独自の制度が設けられています。
船員保険は、一般の健康保険より保障が手厚い点が特徴です。具体的な例は以下の通りです。
- 下船後3カ月の療養補償
- 行方不明手当金
- 労災保険への上乗せ給付
船で働く人の労働環境は陸上勤務者と大きく異なるため、独立した公的制度として運用されています。
国民健康保険とは?

国民健康保険は、自営業者やフリーランスなどが加入する公的医療保険制度です。以下では、国民健康保険の加入対象者や保険料の決まり方について詳しく解説します。
国民健康保険とは?
加入対象者
国民健康保険保険の加入対象者は、以下に該当する人です。
加入対象者
自営業・フリーランス
自営業やフリーランスは、国民健康保険に加入します。退職後や開業後、原則14日以内に国民健康保険への加入手続きをする必要があります。
国民健康保険は、住所地の市区町村が運営する制度のため、住所地の市区町村役場または役所の国民健康保険課で手続きをしましょう。
加入手続きが遅れた場合でも、国民健康保険の被保険者資格は実際に資格を得た日(退職日翌日や開業日など)に遡って発生します。つまり、遡って保険料の支払いが求められます。
国民健康保険への加入手続きが遅れると、多額の保険料を一括で支払う必要が生じるため注意しましょう。
会社を退職した人
会社を退職した人は、国民健康保険への加入か、任意継続被保険者制度を利用するかのいずれかを選ぶ必要があります。どちらを選ぶかは、保険料や保障内容を比較し、自身の収入状況や医療の必要度に応じて判断しましょう。
会社を退職して、次の就職先での稼働まで期間があく場合も、国民健康保険または任意継続被保険者の手続きが必要です。任意継続の申請は、「資格取得申出書」と退職日を証明する書類を、協会けんぽまたは所属していた健保組合へ提出すると完了します。
学生や無職の人
学生や無職でも、親の扶養から外れていれば国民健康保険に加入する義務があります。年間収入が130万円を超えている場合は、親の扶養から外れるため注意が必要です。
親の扶養から外れると、保険料の自己負担に加え、親の扶養控除もなくなるため、世帯全体の負担が増える可能性があります。そのため、あらかじめ保険料の試算や控除の影響を確認しておきましょう。
なお、103万円を超えると、所得税と住民税の支払い義務が生じます。
保険料の決まり方
国民健康保険料は、所得・年齢・世帯構成などによって決まり、世帯単位で計算される仕組みです。被用者保険と異なり、扶養といった概念がないため、家族一人ひとりが被保険者として保険料の対象になります。
細かい計算は市区町村によって異なるため、今回は、新宿区における「概算」の保険料を紹介します。

例えば、総所得が400万円の場合、40歳以下の人の年間保険料は475,793円です。あくまで参考値なので、具体的な金額が知りたい人は加入先の市区町村へお問い合わせ下さい。
後期高齢者医療制度とは?|高齢者向け医療保障

後期高齢者医療制度は、高齢者の医療費を社会全体で支えるために設けられた制度です。
以下では、後期高齢者医療制度の対象者や医療保険の自己負担額について詳しく解説します。
後期高齢者医療制度とは?|高齢者向け医療保障
対象者と加入のタイミング
後期高齢者医療制度の対象者と加入タイミングは以下の2つです。
対象者と加入のタイミング
原則75歳以上の人対象
75歳になると、これまで加入していた健康保険から後期高齢者医療制度に切り替わります。本人による手続きは不用で、お住まいの都道府県の後期高齢者医療広域連合から新しい保険証が郵送されます。
なお、後期高齢者医療制度に切り替わるのは75歳の誕生日当日です。これまで加入していた医療保険(健康保険組合、国民健康保険、共済組合など)の資格は喪失します。この切り替えは自動的に行われ、特別な手続きは不要です。
65歳以上で一定の障害がある人も対象
65歳以上74歳以下でも、一定の障害がある人は、後期高齢者医療制度の対象になる場合があります。
障害の程度については、各都道府県の広域連合が認定をします。例えば、身体障害者手帳1級または2級、要介護認定で一定以上の区分に該当する場合などが、対象として判断される目安です。
申請には、該当する障害を証明する書類を提出し、広域連合の審査を経て認定を受ける必要があります。認定された場合は、75歳を待たずに後期高齢者医療制度に加入できます。
自己負担割合について
後期高齢者医療制度では、医療機関での診療費の自己負担割合が、加入者の所得に応じて1割〜3割の範囲で定められています。

原則として、ほとんどの人が自己負担1割で医療を受けられますが、一定以上の所得がある場合は2割または3割の負担になります。75歳以上の人の医療費の窓口負担が2割になるかどうかは、その人の所得や年金収入などをもとに、世帯単位で判断されます。
具体的な条件は以下の通りです。
- 課税所得が28万円以上
- 年金収入+その他の所得が単身世帯の場合200万円以上、2人以上の世帯の場合:合計320万円以上
これらの条件に当てはまると、医療機関で支払う医療費の自己負担割合が2割になります。
参照:後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)
なお、2割負担の対象者には、病院での支払い負担増加額が1か月当たり3,000円までに抑えられるように配慮措置がなされています。
よくある質問|健康保険制度に関するQ&A

健康保険制度に関しては、加入前後で多くの疑問が生じがちです。ここでは、よくある質問をQ&A形式でわかりやすく解説していきます。
ぜひ、ご自身の状況に照らして確認してみてください。
扶養に入れる条件は?
健康保険における扶養に入るためには、主に2つの条件を満たす必要があります。
- 被保険者と生計を同一にしていること
- 収入基準を満たしていること
扶養認定は健保組合や協会けんぽが行うため、申請書や収入証明などの提出が必要です。
無保険期間があるとどうなる?
健康保険の無保険期間があると、医療費を全額支払わなければなりません。通常であれば3割負担で済む医療費も、保険に未加入の状態では全額支払いが必要です。
保険証をもらうまでの流れは?
健康保険証を受け取るまでの流れは、加入先によって異なりますが、一般的には以下のようなステップを踏みます。
会社員の場合 | ・入社後に会社が手続きをし、健保組合または協会けんぽに加入申請をする ・申請が受理されると、1〜2週間ほどで健康保険証が交付される |
---|---|
自営業やフリーランスの場合 | ・本人が市区町村の役所に出向いて国民健康保険への加入手続きをする ・必要な書類(身分証明書やマイナンバーなど)を提出する ・窓口で保険証を発行してもらえるもしくは、後日郵送になることもある |
加入手続きをした日から保険が適用されるため、医療機関を受診予定がある場合は仮保険証や申請控えで対応できるか事前に確認しましょう。
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